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忘備録>自動車業界で必要な半導体

2024年9月8日 13:33

自動車業界で必要な半導体は、その用途によって多岐にわたりますが、大きく以下の3つのカテゴリに分類できます。それぞれのカテゴリで必要とされる仕様や機能も異なります。

1.パワートレイン系

  • 用途: エンジン制御、モーター制御、バッテリー管理など、自動車の動力源を制御するための半導体。
  • 必要な仕様・機能:
    • 高い耐熱性と信頼性:エンジンルームなどの高温環境下でも安定して動作する必要があるため。
    • 高速なスイッチング性能:効率的な電力変換やモーター制御を実現するため。
    • 高い電圧・電流耐性:大電力を扱うため。
    • 故障検知・保護機能:安全性を確保するため。
  • 具体的な半導体:
    • パワーMOSFET
    • IGBT
    • マイクロコントローラ

2. シャーシ系

  • 用途: ブレーキ制御、ステアリング制御、サスペンション制御など、自動車の運動性能を制御するための半導体。
  • 必要な仕様・機能:
    • 高い信頼性とリアルタイム性:安全に関わる制御を行うため、正確かつ迅速な動作が求められる。
    • センサー信号処理能力:様々なセンサーからの情報を処理し、適切な制御を行う必要があるため。
    • 故障検知・フェールセーフ機能:故障発生時にも安全を確保するための機能。
  • 具体的な半導体:
    • マイクロコントローラ
    • DSP(デジタルシグナルプロセッサ)
    • センサー(加速度センサー、ジャイロセンサーなど)

3. ボディ系 & 情報系

  • 用途: エアバッグ制御、カーナビゲーション、インフォテインメントシステム、自動運転システムなど、自動車の快適性・安全性・利便性を向上させるための半導体。
  • 必要な仕様・機能:
    • 高度な情報処理能力:画像認識、音声認識、通信など、複雑な処理を行うため。
    • 低消費電力:バッテリー駆動のシステムも多いので、省電力性が重要。
    • 高速な通信能力:車内外のネットワークとの連携を行うため。
    • セキュリティ機能:サイバー攻撃などからシステムを守るため。
  • 具体的な半導体:
    • SoC(System on a Chip)
    • メモリ
    • 通信モジュール
    • 画像センサー

自動車業界の半導体の全体的な傾向

  • 高機能化・複雑化: 自動運転技術や電動化の進展に伴い、半導体の高機能化・複雑化が進んでいます。
  • 高信頼性・安全性: 自動車は人命に関わるため、半導体の信頼性・安全性が非常に重要視されています。
  • 低消費電力化: 環境負荷低減のため、半導体の低消費電力化が求められています。

国内の自動車メーカー各社は、半導体不足や技術革新に対応するため、それぞれ独自のアプローチを取っています。

1. トヨタ自動車

  • 半導体子会社設立: デンソーとの合弁会社「ミライズ テクノロジーズ」を設立し、車載半導体の開発を強化。
  • 長期的な視点での調達戦略: 半導体メーカーとの直接的な連携を強化し、安定供給体制を構築。
  • ソフトウェア重視: 車載ソフトウェアの開発を強化し、半導体の性能を最大限に引き出す戦略。

2. ホンダ

  • 半導体メーカーとの協業: TSMCやルネサスエレクトロニクスなど、半導体メーカーとの協業を強化。
  • 戦略的提携: GMとの提携により、次世代電気自動車向けの半導体開発を加速。
  • 内製化検討: 将来的には一部の車載半導体の内製化も視野に入れている。

3. 日産自動車

  • ルネサスエレクトロニクスとの連携強化: 長期的なパートナーシップを締結し、安定供給と共同開発を推進。
  • 半導体スタートアップへの投資: 革新的な半導体技術を持つスタートアップ企業への投資を積極的に行う。
  • 電動化技術: 次世代半導体技術を活用した電動化技術の開発を推進。

4. その他メーカー

  • マツダ: ロームとの協業を強化し、SiCパワー半導体の開発を推進。
  • SUBARU: アイシンとの合弁会社を設立し、電動化技術の開発を加速。
  • スズキ: 半導体メーカーとの連携強化に加え、インドでの半導体生産拠点設立を検討。

全体的な傾向

  • 半導体メーカーとの連携強化: 安定供給と技術革新を両立させるため、半導体メーカーとの連携が不可欠。
  • ソフトウェア開発強化: 車載ソフトウェアの重要性が高まっており、各社が開発体制を強化。
  • 電動化・自動運転: これらの技術革新には高度な半導体が必要となるため、重点的な投資が行われている。

日本の自動車メーカーの半導体戦略:現状の課題と今後の展望

現状の課題

  1. 半導体不足からの脱却:
    • パンデミックや地政学リスクにより、依然として半導体不足が続いています。
    • 特定国への依存度が高く、サプライチェーンの脆弱性が課題です。
  2. 技術革新への対応:
    • 自動運転や電動化など、自動車技術の進化には、高度な半導体が不可欠です。
    • 海外勢に比べて、国内の半導体開発・製造能力が遅れていることが課題です。
  3. コスト競争力:
    • 海外メーカーとのコスト競争が激化する中、半導体のコスト削減が求められています。

解決方法と来年度以降の戦略

  1. 半導体サプライチェーンの強化:
    • 国内での半導体製造能力の強化:
      • 政府の支援策を活用し、先端半導体製造拠点の誘致や国内工場の新設・増設を推進。
      • 例:Rapidusによる2nmプロセス半導体の国内生産を目指す取り組み。
    • 海外との連携強化:
      • TSMCなど海外の主要半導体メーカーとの連携を強化し、安定供給体制を構築。
      • 例:トヨタ自動車とデンソーによるミライズ テクノロジーズの設立。
  2. 技術革新への積極的な投資:
    • 自動運転・電動化向け半導体の開発強化:
      • AIやセンサー技術など、高度な半導体技術の開発に注力。
      • 例:ホンダとGMの提携による次世代電気自動車向け半導体開発。
    • ソフトウェア開発力の強化:
      • 車載ソフトウェアの重要性が高まる中、ソフトウェア開発体制を強化。
      • 例:トヨタ自動車のWoven Planet Holdings設立。
  3. コスト削減努力:
    • 設計・製造プロセスの効率化:
      • デジタル技術を活用した設計効率化や、製造プロセスの自動化・省人化を推進。
    • 部品共通化・標準化:
      • 車種間での部品共通化や、業界標準規格の採用を推進することで、スケールメリットを活かしたコスト削減を目指す。

来年度・再来年度の戦略

  • 国内半導体産業の復活:
    • 政府の半導体戦略に基づき、官民一体となって国内半導体産業の復活を目指す。
    • 海外勢との連携も強化しつつ、国内での開発・製造能力を高めることで、国際競争力を強化。
  • 自動車技術の進化への対応:
    • 自動運転や電動化など、自動車技術の進化に対応できる半導体技術の開発を加速。
    • ソフトウェアとの連携を強化し、自動車の付加価値向上を目指す。
  • 持続可能な社会への貢献:
    • 環境負荷低減に貢献できる半導体技術の開発を推進。
    • 例:SiCパワー半導体など、省エネ性能に優れた半導体の採用拡大。

海外の自動車メーカーも、半導体不足や技術革新の波に乗り遅れないよう、様々な戦略を展開しています。

1. サプライチェーン強化

  • 垂直統合の動き:
    • Tesla: 自社で半導体設計を行い、サプライチェーンへの影響力を高める戦略。
    • VWグループ: 半導体メーカーとの直接契約や合弁会社設立を通じて、安定供給体制を構築。
  • 地域的な分散化:
    • 地政学リスクや自然災害などへの対応として、半導体調達先の多様化や、生産拠点の分散化を推進。
    • 例:IntelやTSMCによる欧米での工場新設。

2. 技術革新への投資

  • 電動化・自動運転向け半導体:
    • 各社が巨額の投資を行い、電動化や自動運転に必要な高性能半導体の開発を加速。
    • 例:QualcommのSnapdragon Rideプラットフォーム、NvidiaのDRIVEプラットフォーム。
  • ソフトウェア定義自動車:
    • ソフトウェアの重要性が高まる中、ソフトウェア開発体制を強化し、自動車の付加価値向上を目指す。
    • 例:VWグループのCariad設立、StellantisとFoxconnの合弁会社設立。

3. 新規ビジネスモデルの模索

  • MaaS (Mobility as a Service):
    • 所有から利用へのシフトに対応し、MaaS事業への参入を加速。
    • 例:GMのCruise、FordのArgo AIへの投資。
  • データビジネス:
    • 自動運転やコネクテッドカーから収集される膨大なデータを活用した新規ビジネスの創出を目指す。

具体的な企業の動き

  • Tesla:
    • 垂直統合戦略とソフトウェア重視の戦略を推進。
    • 自社開発のAIチップ「Dojo」により、自動運転技術を強化。
  • VWグループ:
    • 半導体メーカーとの連携強化とソフトウェア開発子会社Cariad設立。
    • 2030年までに欧州でのEV販売シェア60%を目指す。
  • GM:
    • ホンダとの提携による次世代EV向け半導体開発、Cruiseによる自動運転技術開発。
    • 2035年までに全車種をEV化することを目標とする。
  • Ford:
    • Argo AIへの投資による自動運転技術開発、Googleとの提携による車載インフォテインメントシステム開発。
    • 2030年までに欧州でのEV販売シェア100%を目指す。

中国自動車メーカーの半導体戦略:アグレッシブな最新動向

中国の自動車メーカーは、半導体不足を教訓に、サプライチェーンの安定化と技術革新の加速を目指し、非常にアグレッシブな動きを見せています。

1. 半導体企業への投資・買収

  • 戦略的投資:
    • 吉利汽車: 車載半導体設計会社「湖北芯擎科技」を設立し、高性能SoC「龍鷹一号」を開発。
    • 上汽集団: 地平線ロボティクスなど複数の半導体企業に投資し、自動運転技術を強化。
    • 蔚来汽車(NIO): LiDARセンサーを自社開発し、サプライチェーンの内製化を推進。
  • 半導体企業の買収:
    • 長城汽車: 海外の半導体企業を買収し、技術力を強化する動きも。

2. 自社開発の加速

  • SoC (System on a Chip):
    • NIO: 世界初の7nmプロセス車載SoC「Adam」の開発に成功。
    • 小鵬汽車: Qualcommと共同で自動運転向けSoCを開発中。
  • その他:
    • BYD: 車載半導体の子会社を設立し、IGBTやパワーモジュールなどを自社開発。
    • 長安汽車: Huaweiと共同で、スマートコックピットや自動運転技術を開発。

3. 政府の強力な支援

  • 「中国製造2025」:
    • 半導体産業を重点分野と位置づけ、巨額の投資と政策支援を実施。
    • 2025年までに車載半導体の自給率70%達成を目標に掲げる。
  • 地方政府の支援策:
    • 各地方政府も半導体産業の誘致や育成に積極的。
    • 税制優遇や補助金など、様々な支援策を提供。

まとめ:中国メーカーの強みと課題

強み:

  • 政府の強力な支援: 資金調達や政策面での優遇措置を受けられる。
  • 巨大な国内市場: 市場規模を活かしたスケールメリットを享受できる。
  • 積極的な投資とスピード感: 投資や開発の意思決定が速く、市場の変化に柔軟に対応できる。

課題:

  • 技術力の向上: 海外勢に比べて技術力がまだ不足している部分がある。
  • 人材不足: 半導体設計・製造に必要な高度人材の確保が課題。
  • 国際的な連携: 知的財産権や輸出規制など、国際的なルールとの整合性を保つ必要がある。

ファーウェイの自動車業界への進出:最新情報と戦略

ファーウェイは、スマートフォン事業で培ったICT技術を活かし、自動車業界への進出を積極的に進めています。特に、自動運転やスマートコックピットなどの分野で存在感を高めています。

ファーウェイの自動車戦略

ファーウェイは、自動車メーカーに対して「Huawei Inside」という包括的なソリューションを提供することで、自動車業界への参入を図っています。このソリューションは、以下の3つの主要コンポーネントから構成されています。

  1. スマートカークラウドサービス:
    • 車両のデータ収集・分析、OTAアップデート、車載アプリストアなどのサービスを提供。
    • 自動運転やコネクテッドカーの実現に不可欠なクラウド基盤を提供。
  2. スマートコックピット:
    • HarmonyOSを搭載したインフォテインメントシステム、音声認識、AIアシスタントなどを提供。
    • ドライバーの快適性と利便性を向上させるだけでなく、将来の自動運転を見据えた機能も搭載。
  3. スマートドライビング:
    • MDC(Mobile Data Center)と呼ばれる高性能コンピューティングプラットフォームと、LiDARやカメラなどのセンサー技術を提供。
    • 自動運転システムの開発を支援し、レベル4以上の高度な自動運転の実現を目指す。

ファーウェイの強み

  • ICT技術の蓄積: スマートフォンや通信機器で培った技術を自動車に応用することで、競争優位性を確保。
  • エコシステムの構築: HarmonyOSを中心としたエコシステムを構築し、自動車メーカーやサプライヤーとの連携を強化。
  • 中国市場でのプレゼンス: 中国政府の支援も受け、巨大な中国市場で急速にシェアを拡大。

最新情報と今後の展望

  • MDCの進化:
    • 2023年7月に発表されたMDC 810は、最大400TOPSの演算能力を持ち、レベル4の自動運転に対応可能。
    • 今後もMDCの性能向上を続け、自動運転技術の進化を牽引する。
  • パートナーシップの拡大:
    • BAIC(北京汽車)やChangan Automobile(長安汽車)など、多くの中国自動車メーカーと提携。
    • 欧州の自動車メーカーとの提携も模索しており、グローバル展開を加速させる可能性も。
  • 半導体設計能力の強化:
    • HiSiliconを通じて、車載SoCやAIチップなどの自社開発を推進。
    • 米国の制裁により半導体調達が困難な状況だが、独自技術の開発により、サプライチェーンの安定化を目指す。

DJIの自動運転支援技術:最新情報と戦略

DJIは、ドローン技術で培った画像処理やセンサー技術を活かし、自動運転支援システムの開発にも積極的に取り組んでいます。特に、低コストかつ高性能なシステムを提供することで、自動運転技術の普及を加速させることを目指しています。

DJIの強みと戦略

  • 高度な画像処理技術: ドローンで培った画像認識や物体検知技術を応用し、カメラベースの自動運転支援システムを開発。高精度な認識能力とリアルタイム処理能力を強みとする。
  • 低コスト化: LiDARなどの高価なセンサーに依存せず、カメラを中心としたシステム構成により、低コスト化を実現。
  • オープンなプラットフォーム: 自動車メーカーやTier1サプライヤーとの連携を強化し、オープンなプラットフォームを提供することで、自動運転技術の普及を促進。

自動運転支援におけるDJIの取り組み

  • DJI D80/D80+ & D130/D130+:
    • 高速道路や都市部など、様々なシーンに対応するレベル2+の自動運転支援システム。
    • カメラ、ミリ波レーダー、超音波センサーなどを組み合わせ、高精度な環境認識と車両制御を実現。
    • D80シリーズは最高時速80km、D130シリーズは最高時速130kmまでの走行に対応。
  • DJI スマートパーキング:
    • 自動駐車や遠隔操作による駐車を支援するシステム。
    • 車両周辺の状況をカメラで認識し、安全かつ正確な駐車を実現。
  • 市街地でのメモリー運転:
    • 高精度地図やLiDARに依存せず、ビジョンセンサーを使ったオンラインリアルタイム感知機能を用いて、市街地でのメモリー運転(Memory on Driving)を実現。
    • 特定のルートを一度走行することで、システムが周囲の環境を記憶し、次回以降は自動運転で走行可能。

DJIの今後の展望

  • 自動運転技術のさらなる進化:
    • さらなる高精度化・高機能化を目指し、AI技術やセンサー技術の開発を継続。
    • 将来的には、レベル3以上の高度な自動運転システムの開発も視野に入れている。
  • グローバル展開の加速:
    • 中国市場での実績を基に、欧州や北米など、海外市場への展開を加速。
    • 各国の法規制や交通環境に対応したシステム開発も必要となる。
  • エコシステムの拡大:
    • 自動車メーカーやTier1サプライヤーとの連携を強化し、DJIの自動運転技術の普及を促進。
    • ソフトウェア開発者向けのオープンなプラットフォームを提供し、自動運転技術のエコシステム拡大を目指す。